来 歴

すきまだらけの

すきまだらけの空には
色あせた星でも
べたべたはりつければいい
まだ足りなければ
これでもかこれでもかと
星くずを
夜空いちめんにばらまいてやる
すきまだらけの森には
動物の屍体などほうりこむがいい
できるだけ図体の大きいやつ
生まれる前から目をつけておく
死んだけもののにおいで
森じゅうを満たしてやる

からだのすきまへは
熱いはらわたなど詰めこんでやる
やくざな肉体が
みずからの重みを支えきれず
道なかばにしてしゃがみこむまで
人と人とのすきまへは
七色のことばの果実をふりこぼす
早く芽を出せ
などと歌ったりしないで
大げさな笑い声をたて続ける
手の痛い握手をふんだんにふり回す
せっせせっせ
せっせせっせ

時間と時間とのすきまへは
手あたりしだいにはさんで行く
夏まで燃え続けよ
窓を染めるつるばらの炎
三面記事の中の
見知らぬ土地への親密な挨拶
きのうのできごとは
活字の中に生き残って
時間と時間との連帯は
確かにあったのかなかったのか
くたばれ電話のベル
いやというほど耳につめ込んだあとで
ゆうべの続きの編み物を
墓穴の入り口まで編み続けるつもりだ

それでもすきまは埋まらない
持ち札の大半は宙に舞いあがり
ひゅうひゅうと
風が吹きぬけるあたりで
わたしの未来はとぎれている
底ぬけに明るい崖っぷちから
目をかたくつぶって飛び降りると
わたしが割りこもうとする
そこのすきまだけが
虚無の暗闇でみごとにふさがれている

日日変幻 目次